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波・メール通信句会   
第82回 令和8年2月

富山ゆたか

主宰特選三句

鎧ふなき木々の直立春待てり    伊藤真理子
 秋になると葉を落し、春には新芽を出す落葉樹の姿を的確に詠われた。下五の〈春待てり〉に作者の心情が投影され、重層性のある句になった。

春の風口角上げて歩こうよ     田中 順子
 北風には身も心も縮んでしまうが、春風ならば正に掲句の通りである。元気を貰える句で、中七下五の措辞に共感しきりである。

葉牡丹の皺を重ねて美しき     山下 遊児
 キャベツの一品種であるヨーロッパ原産の葉牡丹。葉は縮緬のように縮れている。中七下五の措辞に成程と納得。人もかくありたいものである。

主宰入選五句

過去は過去夜明けとともに春来たる 菅谷  睦
春泥を踏む子跳ねる子やんちやな子 鎌田紀三男
春の水二人ぐらしの鍋三つ     田中 順子
海鳴を閉じ込めている栄螺かな   山下 遊児
寒がりの両親の墓所春の雪     岡坂ゆう子

作者一句(互選・得点順) 

火の鳥の乱舞の余韻寒夕焼     山田 節子
春動く観察小屋の覗き窓      富山ゆたか
寒明けや潮目くつきり相模湾    大平 政弘
春の雪うす茶の泡の口あたり    関  美晴
立春や八十路は近し耳遠し     中出 隆義
しみじみと人形飾るけふ雨水    宮川 敏江
前カゴの葱風切って特等席     帆川  透
まだ云へる「寿限無」の呪文春の山 稲吉  豊
窟内に神在すとや幣辛夷      霧野萬地郎
置薬屋のふところ刀紙風船     飯野 深草
なんとなくご破算の声雪化粧    粋 狂 子
直垂の武士の掛け声鬼は外     亀倉美知子
チュール着て蠟梅の風曳いてくる  山田せつ子
縄張し団地の隅に土筆かな     坂本 弘道
クラウドファンディング鷹鳩と化す 風野 でら
父母の土地売つて白梅伐りにけり  山崎 美紀
つぶつぶと光る工場おぼろ月    井上 深空
春風やあんよは上手母子連れ    廣田 洋々
風光る遠嶺の藍の透き通る     大谷みどり
梅の里白色五弁枝々に       小泉 楽籠

会員選評より

過去は過去夜明けとともに春来たる 菅谷  睦
 春が持つリセット感が分かる句と思います。(中出隆義)

春泥を踏む子跳ねる子やんちやな子 鎌田紀三男
 幼児たちの好奇心が三段跳びの様なテンポの措辞に弾ける佳句。(宮川敏江)

火の鳥の乱舞の余韻寒夕焼     山田 節子
 寒夕焼を火の鳥の乱舞と捉えたところが秀逸。(山下遊児)

春動く観察小屋の覗き窓      富山ゆたか
 上五に「春動く」と季語と動詞をきっぱり据えて、中七下五に観察小屋の窓に焦点をしぼるにとどめ、シンプルでありながら動物と人間、森の鼓動を感じさせてくれる。(関美晴)

寒明けや潮目くつきり相模湾    大平 政弘
 二月過ぎの相模湾は冷たい親潮が温かい黒潮へと変化する時期で、潮目がことにくっきりと表れる。相模湾をよく見て詠われた。(伊藤真理子)

春の雪うす茶の泡の口あたり    関  美晴
 ほろ苦い薄茶の泡の食感と春の雪の名残りを惜しむこころが溶け合って、味わい深い句になりました。(飯野深草)

しみじみと人形飾るけふ雨水    宮川 敏江
 ひな人形を飾るときの心の落ち着き、心にしみるさまを「しみじみと」と平易に言ったことがよく、取合せの「雨水」と響き合っている。(富山ゆたか))