波・メール通信句会
第80回 令和7年12月
富山ゆたか
主宰特選三句
冬夕焼ペダルかの日へ漕ぎに漕ぐ 関 美晴
過ぎ去っていった日々。再びは戻れないことは解っているのであるが・・。一日の終わりの「冬夕焼」の季語が象徴的である。
さよならの尾灯の潤む小夜時雨 大平 政弘
別れ難い別れなのであろう。「小夜時雨」の季語にご自身の気持を籠めて詠われた。何とも物語性のある句。
ボール蹴る落葉蹴る子にある明日 鎌田紀三男
何か悲しいこと、口惜しかったことがあったのだろうか。ボールを蹴り落葉を蹴っている少年の姿が見えて来る。下五の措辞「ある明日」に共感しきりである。
主宰入選五句
人込みのマスクの奥にある暮し 大谷みどり
バレバレの嘘にうなづく冬ともし 鎌田紀三男
ぽつねんと片目のだるま十二月 稲吉 豊
越えられぬひとつ目深く冬帽子 君島 京子
大太鼓一打のうねり年を越す 関 美晴
作者一句(互選・得点順)
凍光の星座妖光の曜変 山田せつ子
セーターをぬぐ抜け殻は吾の化身 風野 でら
極彩色の寒灯揺るる中華街 田中 順子
年の瀬もハシビロコウに動きなし 霧野萬地郎
伊豆山の磴下る毎冬の海 亀倉美知子
太古よりをみなは強し帰り花 伊藤真理子
舌焦がす千本釈迦堂大根焚き 飯野 深草
友逝きぬ少し欠けたる冬の月 廣田 洋々
寒晴や大磯の富士矜持あり 帆川 透
さらさらと砂糖一匙大晦日 宮川 敏江
白鳥の首はどこぞや羽繕ひ 千乃 里子
ボール追う親子の影や冬夕焼 山崎 美紀
おとろへに万の喝采もがり笛 富山ゆたか
再会を心待ちして冬木の芽 岡坂ゆう子
火縄振り四条通りを歩みけり 坂本 弘道
美々しくも仮の化粧や床紅葉 粋 狂 子
黄蝶かと思えば枯れ葉浮き漂い 中出 隆義
荒荒し河口を出でて冬の海 菅谷 睦
暁天にときめく歩み冬銀河 山田 節子
会員選評より
人込みのマスクの奥にある暮し 大谷みどり
マスクをはずした顔にはそれぞれの生き方や暮らしが現れますね。比喩を使い想像力を掻き立てられるお句。(風野でら)
ぽつねんと片目のだるま十二月 稲吉 豊
だるまにもう片方の目が描かれるよう、即ち願い事が叶うようにと、だるまが置かれている。「ぽつねんと」の措辞が、なんともいえぬ味を出している。(千乃里子)
凍光の星座妖光の曜変 山田せつ子
天には凍てて輝くオリオン座やおおいぬ座。地には人智の妖しい光を放つ天目茶碗の星紋。破調ながら不思議な魅力をもった佳句。(伊藤真理子)
セーターをぬぐ抜け殻は吾の化身 風野 でら
脱いだセーターがまだ温もりを残したまま横たわっている様を見て、それを吾が化身と見立てたのは何ともおもしろい。(鎌田紀三男)
極彩色の寒灯揺るる中華街 田中 順子
中華街を久しぶりに歩いてみて、けばけばしくも感じる赤い灯が目に入った。忘年会には平常時と異なるこの景色が刺激的である。(富山ゆたか)
年の瀬もハシビロコウに動きなし 霧野萬地郎
ハシビロコウ、何時間でも獲物を捕らえるまで動かないらしい。待つことの苦手な人間にユーモアのパンチです。(関美晴)
伊豆山の磴下る毎冬の海 亀倉美知子
山を下り、次第に迫ってくる海。作者の動きと眺める景色に共感します。(霧野萬地郎)


