「草青む」より

三月や越後訛の泰夫の忌       山田 貴世




「春の足音」より

花だよりぼつぼつ来るぞ河津より   西室  登

潮集より12句

寒き日や駅階段を一歩二歩      富山ゆたか
裸木となるも数多の鳥を呼ぶ     鎌田紀三男
蔵王嶺に今し隠るる冬日かな     鈴木朱鷺女
新玉や赤福餅のにぎにぎし      飯野 深草
弾初のワルツゆつくりゆつくりと   田中 順子
束の間のひと日の褒美寒落暉     野口 尚子

二百余の関節やすめ日向ぼこ     山田せつ子
初釜や貫入美しき副茶碗       澤村いづみ
八百万の神ます大和初明り      伊藤真理子
風切羽透ける海鳥大旦        菊地ゆき子
四角張る心まあるく日向ぼこ     開米 遊子
緞帳は鶴舞ふ富士や初歌舞伎     髙橋きよ子

灘集より12句

今日よりは明日の高みへ初景色    田原梨絵子
尖塔の影のきはやか今朝の冬     大平 政弘
寒禽や欅の天辺引き締むる      中嶋  敦
緩びなき雪吊美しき古刹かな     志鎌惠美子
一人席ばかりの喫茶冬に入る     菅井 亮太
滑空の威風堂々初がらす       濱田 聡子

不器用に生きてもらららクリスマス  筒井 洋子
箸紙に婚の日近きむこの名を     長野 保代
仕残しの悔いは忘れろ除夜の鐘    並木 凡人
何事も書かねば忘る卒寿の春     畠山 久江
老僧の「喝」の一声寒に入る     遠山 典子
霜枯の莟日溜り抱くかに       清水 茂代

波集より12句

冬ぬくし障子に二羽の小鳥たち    土屋 健司
愛日の母子の背なや長き影      松岡美由紀
ベランダの洗濯物も冬うらら     西田まさ子
春到来喇叭で知らす水仙花      中出 隆義
小春空産声あげし子の未来      横田 肇子
七草粥作りて忍ぶ亡き息子      金子千惠子

谷深く霜おく朝のかづら橋      井上 尚子
いまどきに妻の霜焼け我が罪か    山下  巌
びゅーと吹く北風の口マスク無し   井上 深空
外は雨一人ぼっちのクリスマス    岡崎記久子
柚子なしに冬至ひねもすひなた浴   小林 昭夫
米寿へと一歩の歩み初明り      増田 浩子